西金沢から車で北へ10分ほど走ると、駐車場約1,500台の大きな商業施設が見えてきます。イオンタウン金沢示野。核店舗はマックスバリュ金沢しめの店で、専門店を合わせて30店舗ほどが入っています。

ところが、この施設の住所は「示野」ではありません。金沢市戸板西1丁目55番地です。名前と住所が食い違っている。その理由をたどると、明治の村と平成の区画整理の話になります。

この記事で紹介するのは金沢市側のスポットです。西金沢駅からは北へ3〜4kmあり、歩いて行ける距離ではありません。

まず、いまの施設の姿

名称イオンタウン金沢示野
住所金沢市戸板西1丁目55番地
電話076-268-8430
構成マックスバリュ棟/イースト棟/専門店棟
営業時間マックスバリュ棟 10:00〜21:00/イースト棟・専門店棟 10:00〜22:00
駐車場約1,500台
敷地面積86,939㎡
商業施設面積30,144㎡

営業時間は棟ごと・店舗ごとに異なり、変更されることもあります。おでかけ前にご確認ください。

金沢駅西口からは北陸鉄道バスの52系統(示野線)が出ていて、最寄りのバス停は「示野ショッピングセンター」。西金沢から公共交通で向かうなら、いったん金沢駅に出る形になります。実際には、車で行く場所です。

商業施設面積は約3万㎡。同じくらいの規模の施設としては、西金沢の南にあるアークスクエア御経塚(約31,100㎡)が近い数字です。西金沢を真ん中に置くと、北に示野、南に御経塚、という位置関係になります。

開業は2006年、イオンタウンになったのは2011年

年表にすると短いのですが、運営会社が途中で変わっています。

年月できごと
2006年8月1日「イオン金沢示野ショッピングセンター」として開業(イオンリテールが運営)
2011年11月21日運営がイオンタウンへ移り、名称を「イオンタウン金沢示野」に変更

「イオン」から「イオンタウン」へ。名前が一語増えただけに見えますが、モール型の直営店舗を核にする形から、スーパーと専門店を並べる郊外型の形へ、運営の枠組みが移ったことになります。

なお、「イオンスタイル金沢示野」という施設は存在しません。石川県内で「イオンスタイル」を名乗るのは野々市市の御経塚(アークスクエア内)のほうです。検索するとときどき混ざって出てくるので、ここは分けて覚えておくと迷いません。

「示野」と「戸板西」がずれている理由

本題です。なぜ施設名は示野で、住所は戸板西なのか。

示野は、明治より前からある古い村の名前です。1889年(明治22年)の町村制施行で、示野村は西念新保村・長田村・若宮村・二口村など18の村と合併し、戸板村になりました。示野は戸板村の一部になったわけです。その戸板村は1943年(昭和18年)10月1日に金沢市へ編入されています。

つまり、示野は戸板より狭い、戸板の中の地名。いまも金沢市には示野町・示野中町という町名が残っています。

そこへ平成の区画整理が入ります。この一帯は「金沢市戸板第二土地区画整理事業」の施行地区で、施設が開業した2006年の時点では、まだ新しい町名が決まっていませんでした。石川県に提出された大規模小売店舗立地法の届出には、所在地が「金沢市戸板第二土地区画整理事業地内77街区」と書かれています。町名ではなく街区番号です。

「戸板西1丁目」「戸板西2丁目」という町名が定められたのは2014年(平成26年)6月28日。施設の開業から8年後でした。

  • 開業時(2006年) … まだ町名がなく、通称として広く知られていた「示野」を施設名に採用
  • 町名決定後(2014年) … 住所は「戸板西1丁目55番地」に
  • 施設名はそのまま … 定着した「示野」を変えなかった

先に名前がついて、あとから住所がついてきた。名と住所がずれているのは、そういう順番だったからです。

「戸板」と「示野」は学校の名前でも入れ替わっている

同じ入れ替わりは、地元の小学校の校名にも残っています。金沢市立戸板小学校の沿革によれば——

  • 1871年12月(明治4年11月) 示野小学校を創立
  • 1892年4月(明治25年) 示野小学校が戸板乙尋常小学校に改称
  • 1895年5月(明治28年) さらに戸板西尋常小学校に改称
  • 1902年4月(明治35年) 戸板東尋常小学校と合併し、戸板尋常小学校に

「示野」で始まった学校が「戸板」を名乗り、途中では「戸板西」と呼ばれていた時期もあった。いまの町名「戸板西」と同じ字が、120年以上前の校名に一度出てきているわけです。

明治期の校名「戸板西」と、2014年に定められた町名「戸板西」に直接のつながりがあるかどうかは、今回の調べでは確認できていません。字が重なる、というところまでです。

なお戸板小学校の校舎は、この区画整理事業に伴って2013年3月に新校舎が竣工し、二口町から現在の戸板1丁目へ移転しています。イオンタウンのある一帯は、この十数年でまとめて姿を変えた場所ということになります。

地名の読み替えや取り違えは、この地域ではよくある話です。「四十万」と書いて「しじま」や、金沢市と野々市市に同じ名前がある押野のように、由来をたどると土地の来歴が出てきます。買い物ついでに看板の字を眺めてみると、少し見え方が変わるかもしれません。

参考