金沢市長坂町にある大乗寺(だいじょうじ)は、曹洞宗の名刹として知られています。座禅で訪れたことのある人もいるかもしれません。この寺、実はもともと野々市にありました。

1263年、野々市で創建

大乗寺のはじまりは 弘長3年(1263年)。富樫家尚が、野市(現在の野々市市)に真言宗の澄海阿闍梨を招いて創建したのが起こりです。

そう、最初は真言宗の寺でした。いまの曹洞宗ではありません。

禅寺への転換

転機は 弘安6年(1283年)。徹通義介を招いたことで、大乗寺は禅寺になります。徹通義介は道元の法系につらなる僧で、この転換によって大乗寺は曹洞宗の重要な寺院としての歩みを始めました。

創建から20年で宗派が変わる。中世の寺院がいかに、時の有力者との関係のなかで姿を変えていったかがわかります。

富樫氏の寺だった

創建した富樫家尚は、加賀の守護を務めた富樫氏の一族です。富樫氏は野々市・金沢を流れる高橋川中流域の「富樫郷」を本拠とし、1063年には野々市に館を構えたと伝わります。

富樫氏の館跡は長く場所がはっきりしませんでしたが、1994年、マンション建設にともなう発掘調査で館を囲む大規模な堀が見つかり、石碑の位置より約400メートル南の住吉町が実際の館跡と確認されました。

その富樫氏は 1488年、加賀一向一揆によって滅びます(一向一揆の拠点は米泉にあった)。創建者の一族が消えたあとも、寺は残りました。

元禄10年、長坂へ

大乗寺が現在地の金沢市長坂町へ移ったのは 元禄10年(1697年)。創建から400年以上あとのことです。移転後は加賀藩家老・本多家の菩提寺となりました。

西金沢から見ると

いま大乗寺があるのは、西金沢駅から南東へ数キロ。歩くには遠いですが、自転車やバスなら行ける距離です。すぐ近くには大乗寺丘陵公園があり、金沢市街と日本海まで見渡せます。ツツジの見頃は例年4月下旬から5月初旬です。

野々市で生まれ、長坂に移った寺。その両方が西金沢を挟んだ場所にあるというのは、このあたりが昔から人の行き来する土地だったということなのかもしれません。

参考